認知症高齢者の徘徊とは、記憶力や認知機能の低下によって、目的も分からずに(家の中や外を)歩き回ったりする行動を言います。原因には不安やストレス、基本的な欲求不満、睡眠障害、薬物の影響などがあります。転倒や交通事故などの危険も高く、介護者の介護負担が増える事もあります。在宅介護にて、このような症状が始まったらどうしたらいいのか?その原因と対策を考えてみます。
徘徊の原因
認知症の悪化
認知症が進むと、環境の把握が困難になります。これにより、住んでいる場所や帰り道を忘れることがあります。また、新しい環境への適応が難しくなることもあります。
結果として、迷子になったり、自宅にいるにも関わらず「家に帰りたい」と思って外に出てしまうことがあります。また、同居直後などは、環境の変化で不安が増し、徘徊が始まることがあります。
ストレス発散や過去の習慣
認知症高齢者は不安やストレスを感じやすくなります。これは、家族とのコミュニケーション不足や記憶力・理解力の低下が原因です。これらのストレスを解消するために、徘徊が始まることがあります。
また、「近所のスーパーに行きたい」や「畑仕事がしたい」といった過去の記憶や習慣への執着が徘徊の原因になることもあります。
生活リズムと睡眠障害
認知症高齢者は、睡眠障害や生活リズムの乱れによって、昼夜逆転を起こしやすいです。夜の活動性が高くなるため、夜間の徘徊につながる事があります。夜間の徘徊は、本人へのリスクも高くなりますし、その対策のため、家族の介護負担も大きくなります。
※昼夜逆転とは、生活リズムの乱れにより、昼間に寝て夜起きだす事を言います。
欲求を満たすため
欲求が満たされていないと感じることも原因の一つになります。例えば、「ご飯を食べたい」や「トイレに行きたい」などの欲求です。しかし、実際には食後や排泄後でも、記憶力の低下により本人は満たされていないと感じることがあります。
薬物の影響
認知症高齢者が服用している薬物の副作用や相互作用が、徘徊行動を引き起こすこともあります。服薬開始直後に徘徊が始まる場合、主治医に相談することが重要です。
徘徊する事での危険とは
転倒や交通事故による危険
徘徊中に転倒や交通事故に巻き込まれる危険があります。
無意識による犯罪
無意識に他人の家や敷地に侵入することがあります。その結果、庭のものを壊したり、他人の畑から野菜を取ってしまうなどのトラブルが発生することがあります。
転倒リスクの増大と健康問題
認知症があると、疲労に対する適切な休憩や水分補給が出来ません。そのため、屋内でも長時間の徘徊による体力消耗で転倒リスクが高くなります。また、適切な水分補給が行われないことで、脱水など健康状態が悪化する可能性もあります。
介護負担の増悪
認知症高齢者の徘徊防止のため、家族や介護者の負担が増えます。常に見守りが必要な場合、時間制約や精神的ストレスが大きくなり、仕事に影響することもあります。
家族の出来る対策
自宅の環境設定
徘徊の予防には環境設定が役立ちます。出入り口の施錠方法を工夫したり(本人が分かりにくい場所にカギを増やす)、人感センサーを設置して行動を把握することができます。さらに、家の中に目印や案内を設けることで、本人がトイレなどの目的地を見つけやすくなります。
コミュニケーションを図る
家族や介護者は、高齢者とのコミュニケーションを大切にし、安心感を提供することで、徘徊の原因となる不安やストレスを軽減できます。しかし、同じ話を繰り返すことは介護者の負担を増やします。家族の協力やサービス利用を通じて、両者のバランスを保つことが重要です。
生活リズムの改善
高齢者の日常生活に一定のルーチンを設けることで、リズムを整え、徘徊のリスクを低減させます。例えば、起きる時間や寝る時間を決めておく。適度な運動や定期的な外出を習慣づけることなどが有効です。
アプリやGPSを活用する
外出時や近くにいない時の居場所確認には、GPS機能付き商品やスマートフォンアプリが便利です。ただし、本人が身に着ける必要があるため、生活スタイルに合った選択が大切です。スマートフォンを家に置いて外出することもよくある話です。
地域との連携
地域住民や自治体、警察と連携し、認知症高齢者の徘徊に対する支援体制を作っておきます。また、近所の方に先に説明しておくことで、近隣トラブルを回避する事が出来る時もあります。
介護保険サービスの利用
通所サービスや入所サービスの利用は、家族の不安や負担を軽減してくれます。また、訪問サービスを定期的に利用する事で、本人の安否確認にも役立ちます。介護負担や家族の生活スタイルに合わせたサービスを上手く活用していきましょう
記事のまとめ
徘徊は、転倒や交通事故などの危険だけでなく、近隣トラブルや家族や介護者の負担増大にもつながります。対策する事でも、安全確保や介護負担の軽減は出来ますが、家族だけでの対応が難しい場合は、入所や通所・訪問サービスを活用しましょう。
最後に、この記事を読んでいただき、ありがとうございました。