自分で食べる事は出来るけど、食べこぼしが多い人を良く見かけます。
食べこぼしが多いと、食後の片付けが負担になってきます。しかし、食事を全部介助する事も介護負担は大きいです。
そんなジレンマは、施設だけではなく、在宅で介護している家族も感じる人が多いと思います。
この記事では、少しでも食べこぼしを減らすための解決策を解説していきます。
これを見て実践してくれたら、きっと食べこぼしが減ると思います。実際に施設でも行っている対策なので、是非読んでみてください。
食べこぼしが増える、6つの原因と解決策
認知症高齢者の食べこぼしについて、問題になると考える、6つの原因と解決策を具体的に書いて行きます。
原因① 「道具を上手く使えない」
上手く道具が使えないと、皿からすくう時や、すくったものを口に運ぶ時に食べこぼしが見られます。
原因としては、加齢による筋力低下や感覚障害などにより、手が上手く使えない事が考えられます。
そのため、箸を上手く使えなかったり、スプーンを水平に保持したまま口まで運ぶ事が出来ずに食べこぼしてしまいます。
また、認知症によって道具の使い方が分からなくなる人や、色の判別や距離のとらえ方が苦手になる人もいます。
こうなると、皿の場所が分からなくて、上手くすくえなかったり、口まで運ぶ距離が分からずに、途中で落としてしまいます。
解決策①:本人にあった道具を準備する
本人の出来ない部分を補えるような道具を考えて準備しましょう。例えば、箸が上手く使えずに食べこぼす人には、スプーンを使ってみる。スプーンでも食べこぼす人には、先割れスプーンを使ってみるなどです。
他にも、握力が弱くて上手く道具を持てない人には、太柄のグリップを装着すると、しっかりと持てる様になり、食べこぼしが減る人もいます。
また、便利な道具には、食器にもあります。すくい易いように縁が高く反り返りがついたお皿や、動かないように、底に滑り止めが付いたものを使う事で食べこぼしが減る事もあります。
認知症により、色の判別や距離が上手く把握できない人には、テーブルと食器の色を変える、皿の淵に色がついたものを使うなどして、皿の位置が分かりやすい工夫をしてみましょう。
また、使い捨てのエプロンも便利です。直接食べこぼしが減らせる訳ではないですが、片付けが楽になります。
解決策②:リハビリを受けて、筋力アップや動作を習得する
筋力の低下や手の動きに問題があったり、道具の使い方が分からない方は、リハビリを受ける事も有効だと思います。
リハビリには、機能訓練と呼ばれる筋力強化練習もありますが、ADL動作練習と言われる、日常生活動作の練習もあります。
機能訓練を受けて、筋力をアップさせたり、ADL動作練習で、道具の使い方や手の動かし方などを習得する事で、食べこぼしが減る事もあります。
原因② 「姿勢が保持出来ない」
高齢になると、椅子に座っていても、徐々に姿勢が崩れてくる人がいます。左右に傾いてきたり、お尻が前にズレてきたり、顔がうつむいてきたり・・・。
在宅での食事場面を見ると、結構そのままの姿勢で食べさせている家族の方が居ます。
しかし、そんな姿勢では、食器の中が見えなかったり、道具も上手く使えなくなり、食べこぼしが増える原因になります。
姿勢が崩れる原因は、筋力や体力が低下して、長時間同じ姿勢でいる事が難しい事や、お尻が痛くなってずらしているが考えられます。
コミュニケーションが取れる相手であれば、本人に理由を聞いて対処する事が一番ですが、認知症があるとそれも難しくなります。
解決策:クッションや介護用品を活用しよう
姿勢が傾く方向にクッションを入れて、姿勢を補助してあげる事が一番簡単だと思います。ただ、それでも上手く修正出来ない時もあります。
そういう時は、姿勢を保つための介護用品を使ってみましょう。
U字クッションと言わる物や、椅子や車いすに取り付けて姿勢を補助してくれる道具もあります。また、姿勢を保持するための座布団もあります。
座布団型のものは、クッション性が良いものが多いので、長時間座って居る事でお尻が痛くなる人にも向いています。
姿勢を保つための便利な道具について、詳しく知りたい方は、こちらの記事をみてください
原因③ 「机や椅子の高さが本人に合っていない」
食べこぼしには、机や椅子が本人の体格にあっているかが重要になります。
今の高齢者は、体格が小さい方が多く、腰が曲がっている人もいるため、普段自分たちが使っている物だと体格に合わない事があります。
椅子が高すぎると、足が浮いてしまってバランスが取りづらくなり、姿勢がくずれたり、疲れやすくなります。
また、机が高すぎる場合は、食べる時に手が動かしくにくくなるため、疲れやすくなったり、直接食べこぼしにつながります。
椅子は、背もたれに背中を付けて、足の裏が床にしっかりと付くものを選ぶ。机は、手を載せた時に、肘が90度程度に曲がるものを選ぶと良いでしょう。
解決策: クッションや足台、介護用品を上手く使おう
本人に合わせた、机や椅子を準備する事が一番簡単です。
しかし、購入すれば、お金も掛かりますし、本人だけ家族と別の机で食べる事になります。
もし、今使っている机や椅子を使うのであれば、座面にクッションや座布団を使って、高さを調整したり、浮いた足の下に足台を使用してみるのもいいと思います。
また、高さ調整が出来る介護用の机もあります。キャスターがついている物が多いので、食べる時は、家族が使う机に並べれば一緒に食事を楽しめます。
また、使わない時は簡単に移動が出来るので片付けも楽です。
原因④ 「眠そうにしていたり、ボーっとしている・・」
自分たちは、こういう状態の事を覚醒が悪いと表現する事があります。
覚醒が悪い時は、意識がハッキリとしていないため、食べこぼしが多いだけではなく、食事がのどに詰まったり、ムセ(誤嚥)てしまう可能性も高くなります。
原因は様々ですが、薬の副作用であったり、睡眠不足、病気の症状の可能性もあります。また、認知症が進行してくると、徐々に覚醒が悪くなってくることもあります。
解決策①: 刺激的な環境を作ったり、生活リズムを改善しよう
認知症の進行や睡眠不足が原因であれば、刺激的な環境を作ってみましょう。
例えば、食事場所の照明を明るくしたり、色鮮やかな食卓を準備したり、会話を楽しむ事も良いと思います。また、日々の生活リズムを整える事も大事です。
昼間は、しっかりと起きて活動的に過ごす事で、夜しっかりと寝る事が出来ます。しかし、日中ベッドで過ごす時間が増えると、夜に寝る事が出来なくなり、昼夜逆転が起きてしまいます。
こうなると、日中に眠くなり、食事だけではなく、色々な生活場面で支障が出てきます。
解決策②: 主治医に相談しよう
高齢者は、薬の影響が強く出る事があります。夜に服用する眠剤が日中まで効きすぎたり、気分を落ち着かせる薬を飲むことで、覚醒が悪くなる時もあります。
また、急に覚醒が悪くなった時は、病気の可能性もあります。一度、主治医に相談してみましょう。
原因⑤ 「食事形態があっていない」
食事の形態とは、食事の形状や食材の硬さや大きさなど、食事全体の特性を言います。
食事形態が本人に合っていないと、食べこぼしの原因になるだけではなく、ムセ(誤嚥)の原因になることもあります。高齢になると、嚥下機能(食べるための能力)は低下してきます。
そのため、本人の嚥下機能に合わせた食事形態を作る事が必要になります。
また、本人が使っている道具などにも配慮する必要があります。例えば、箸が使用出来ないためスプーンを使用しているのに、すくいにくい形状をしていたり、滑りやすい食品だったりすると食べこぼしの原因になります。
また、認知症の人であれば、大きさや硬さが合っていないと、上手く口に入れれなかったり、噛み切れないため事で口から出してしまう人もいます。
解決策:本人にあった食事形態を準備しよう!購入する事も出来る!
本人が使用している道具や嚥下機能(食べる能力)を考えて、大きさ・硬さ・形状などを考えて準備してみましょう。
また、どんな内容が良いのか分からない時は、専門スタッフに相談してみましょう。病院や施設にいる、栄養管理士や言語聴覚士(リハビリ)が適任だと思います。
また、本人に合わせた食事形態で作る事が大変な時は、配食サービスや購入する事も一つの手段です。
原因⑥ 「食事場所が集中出来る環境ではない」
認知症があると、周囲の環境に注意が向きやすくなり、食事に集中出来なくなる人がいます。
例えば、周囲から人の声やTvの音が聞こえる落ち着かない環境であったり、部屋の中が極端に明るすぎたり、乱雑であったりなどです。
こんな環境では、食べこぼしだけではなく、窒息やムセ(誤嚥)の可能性も高くなります。
ただ、こういう環境が刺激となり、逆にしっかりと目を覚まし(覚醒が良くなる)て、上手に食べれる人もいます。
そのため、その人の状態に合わせて考える事が大事になると思います。
解決策:落ち着いた環境を作る
周囲の環境が、本人にとって刺激が強すぎると感じたら、食事場所を周囲が静かなところに変更したり、照明を少し暗くしたり、シンプルで落ち着いた雰囲気の部屋に変えてみましょう。
食べこぼしを対策する事でのメリットとは・・
食べこぼしが多いと、介護負担が増えるだけではなく、その原因は窒息やムセ(誤嚥)に繋がるものもあります。
また、食事を介助してしまう人も増えるため、自立支援を妨げる原因にもなります。
そのため、「食べこぼし」に対する対策は、介護負担軽減・自立支援・食事の安全性の向上など、多方面にメリットがあります。
しかし、解決策を考えるためには、しっかりとした評価や観察が必要になります。もし、家族だけで考えたり、行ったりする事が難しいと思ったら、専門スタッフに相談しましょう。
食事は、本人にとっては楽しみであり、生活の質の向上に大きくかかわります。しかし、家族にとっては、介護負担が大きくなりやすい項目でもあります。
この記事の内容が、本人や家族にとって、少しでも役に立つ内容になったらうれしいです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。