認知症の介護を始める時に、家族が知っておくべき6つの事

介護と書いたパネル それを眺めている高齢者

 この記事は、認知症高齢者の家族や介護者を対象に、在宅介護における問題と対策についてわかりやすく解説しています。

認知症高齢者の介護には様々な問題を伴うことがありますが、適切な知識と対策を身につけることで、高齢者と介護者双方の負担を減らす事が出来ると思います。

まずは、認知症について知っておくべきこと

 認知症になると、脳の機能が低下し、記憶力や判断力、コミュニケーション能力などが徐々に衰えていきます。

原因は様々で、アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などがあります。認知症の種類によっては、症状もかわってきます。

また、怒りやすいとか、1人で外に出て行ってしまう徘徊など、周辺症状と言われるものにも対応していかないといけません。

認知症は、進行していくものです。その時の状況にあわせた、介助方法を変える必要があります。

その② 起こりうる問題

在宅介護がスタートすると、色々な問題に直面すると思います。ここでは、大きく分けて4つの問題点について書きました。先に知っておくことで、対策を考えておきましょう。

身体的な問題

 認知症高齢者は、年齢や病状の進行により、身体的な問題が増えてきます。たとえば、関節の硬直や筋力低下による転倒リスクです。これにより、移動やトイレ、入浴に介助が必要になってきます。また、食べる能力に問題が出ると食事の介助が必要でしょう。

これらの問題に対処するためには、適切な介助や住宅環境の調整が大事になります。例えば、手すりの設置やスリッパの選び方によって転倒リスクを軽減することができます。また、1人での排泄が難しくなり、失禁が見られるようになったら、尿漏れパッドやオムツを利用することで、介助負担を軽減しながら。衛生的に過ごすことも出来ます。色々な想定を考えて、環境面の変更で対応するのか、それとも介助に切り替えるのかなど、対策を検討していきましょう。

認知症の症状による問題

 認知症は、記憶力の低下や判断力の喪失、言語能力の低下など、さまざまな症状が現れます。これらの症状が介護に与える影響は大きく、高齢者本人や家族にとってもストレスがたまることがあります。そのため、症状に応じた対処方法を見つけることが大事です。例えば、記憶力の低下に対しては、写真やメモを使って情報を可視化し保存することで、高齢者が後になって思い出す手助けになります。また、言語能力の低下に対しては、簡単な言葉やジェスチャーを使ってコミュニケーションを取ることも大事です。

介護者の介護負担の問題

周囲の協力

 認知症高齢者の介護には、身体的・精神的負担が大きくかかります。介護者は、自分のストレスや負担を軽減するために、適切なサポートを受けることが重要です。まず、家族や友人、地域の支援団体と連携して、負担を分散させましょう。また、必要な介護サービスを利用し、介護負担を軽減させる事も大事です。

情報収集

 介護者自身が情報収集を行い、認知症に対する理解を深めることで、高齢者とのコミュニケーションが円滑になり、介護負担も軽減する事があります。セミナーや勉強会に参加し、他の介護者との交流を通じて、情報交換や相談を行いましょう。これらの活動は、介護者自身の心の支えとなり、ストレスや負担も軽減することができます。

健康管理

 介護者自身の健康管理も大事です。適切な食事や睡眠、適度な運動を心がけ、自分自身の心身の健康を維持しましょう。健康な状態であれば、高齢者への介護も円滑に進めることができますし、自分自身のストレスも軽減されます。

金銭的な問題

 施設入所にくらべ、在宅介護は金銭的な負担が低いと言われていますが、介護用品や介護サービスを利用する事で、金銭的な負担は増えていきます。また、施設入所と違い、本人の介護をするために仕事を休んだり、パートにかわったりとする事と、収入が下がってしまいます。支出は抑えられても、収入が減るため、トータル的な金銭的負担は、高くなる事もあります。

その③ 準備しておくべき事

行き当たりばったりの対応では、介護者の介護負担もストレスも大きくなるばかりです。可能な限り準備をしておく事で、少しでもスムーズな在宅介護がすすめられると思います。

介護の計画と準備

 認知症高齢者の在宅介護をスムーズに行うためには、事前の計画と準備が重要です。まずは、高齢者の状態やニーズを把握し、適切な介護計画を立てましょう。例えば、「昼間は仕事で介護出来ないけど、1人で家に置いておくのは心配だから、通所サービスを使用する。」「家族が風呂に入れるのは大変だから、入浴は、訪問サービスを利用する」などです。これには、医療専門家やケアマネージャーと連携し、アドバイスを受けることが役立ちます。また、家族や友人などの協力を得て、支援体制を整えることも大切です。

安全性の確保

 認知症高齢者の在宅介護において、安全性の確保は欠かせません。まず、住居内の安全対策を行い、転倒や事故のリスクを減らしましょう。例えば、床や階段に滑り止めを設置したり、手すりを取り付けたりすることが効果的です。また、薬の飲み忘れや過剰摂取を予防するためにも、薬の管理を徹底しましょう。さらに、認知症高齢者が家族の監視がない状況で外出しないよう、ドアにロックや警報装置を設置したり、本人にGPSを携帯させる事も検討が必要かもしれません。必要な対策をしていくことで、高齢者の安全性を確保し、家族も安心して介護に取り組む準備をしましょう。

コミュニケーション方法の心構え

 認知症高齢者とのコミュニケーションは、介護において非常に大事です。そのためにも、認知症という病気の理解や、高齢者の気持ちを理解する必要があります。介護負担や日々のストレスによって、気持ちに余裕がなくなる時もあると思います。正直、イライラする時もあると思います。しかし、適切なサポートを提供するために、穏やかで丁寧な言葉遣いや表情を心がけましょう。また、高齢者が話すペースに合わせて、ゆっくりと耳を傾けることも大切です。無理に話を聞かせるのではなく、高齢者が自分で話す意欲を持てるように心掛けましょう。

その④ 生活動作のサポート

 在宅介護では、高齢者の身体的な状態や認知症の進行具合により必要なサポートは様々です。その中でも、介護負担が大きいと言われてる、食事・排泄・入浴、移動は、どのようなサポートが必要になってくるのか、確認しておきましょう。

食事のサポート

 認知症高齢者の食事のサポートでは、栄養バランスの良い食事を提供することが大事です。しかし、認知症により食事拒否などが見られる事があります。そのため、食事を楽しめるように、彩り豊かで見た目も美味しそうな料理を用意する事も大事です。また、食べるスピードや嚥下の困難さに合わせて、柔らかい食材やペースト状の食事も検討してください。食事中は高齢者の様子を見守り、必要であれば食事の介助を行いましょう。

トイレや入浴のサポート

 本人のプライバシーや尊厳を守ることが大事です。トイレの場合は、定期的にトイレの時間を設けたり、排泄のサインを見逃さないようにしましょう。また、便座につかまりやすい形の手すりを取り付けることで、安全性を高めることができます。入浴の場合は、滑り止めや手すりを設置し、本人がリラックス出来るように、ゆっくりと入浴をサポートしてください。また、浴室の温度や、お湯の水温や湯量にも注意しましょう。

移動のサポート

 認知症高齢者の移動のサポートでは、安全かつ効率的な方法を見つけることが重要です。まず、高齢者の移動能力などの身体機能を把握し、適切な補助具(歩行器や杖など)を選択しましょう。また、移動を介助する際は、高齢者の歩行スピードに合わせることも大切です。ほかに、住居内の移動経路には、余計なものを置かず、転倒のリスクを減らす工夫も行いましょう。これらのサポートにより、認知症高齢者の日常生活をより快適で安全なものにしていくことができます。

その⑤ 日常生活のサポート

 認知症高齢者の介護では、記憶障害などの観点から、生活全般での介助が必要になることが多くなります。しかし、上手くサポートが出来れば、穏やかで質の高い生活を送る事が出来まます。また、介護者の負担を軽減することにも繋がります。

薬の管理

 認知症高齢者は、薬の服用を自分で管理することが難しい場合が多いです。飲み忘れや過剰摂取などが起きないように、介護者が服薬のスケジュールを把握し、必要な時は手助けをしましょう。

運動の提供

 運動は筋力の維持や血行促進に役立ちます。適度な運動を継続することで、認知症高齢者の健康を維持し、介護の負担を軽減できます。散歩や軽いストレッチなど、高齢者に適した運動を選びましょう。

口腔ケアの実施

 口腔ケアは、口臭や歯周病を防ぐだけではなく、誤嚥性肺炎の予防にもなります。適切な歯ブラシや歯間ブラシを使って、口の中を清潔に保ちましょう。また、口腔内の乾燥を防ぐために、適度な水分を摂取する事も大事です。

皮膚トラブルの対策

 スキンケアは、皮膚の乾燥やかゆみを防ぐためだけではなく、褥瘡(床ずれ)予防としても重要です。高齢者は皮膚が薄くなり、乾燥しやすくなるため、保湿や清潔保持が大事です。定期的に皮膚のチェックを行い、必要に応じて保湿クリームを塗布しましょう。

円滑なコミュニケーション

 認知症高齢者にとって、コミュニケーションは精神的な安定や人間関係の維持に大切です。コミュニケーションの方法としては、ゆっくりと分かりやすく話すことや、簡潔な言葉を使うことが大切です。また、相手の目を見て話すことで、安心感を与えることができます。非言語コミュニケーションも大切で、触れ合いや笑顔などで愛情や支援を示すことが大事です。

規則正しい生活リズムの確保

 認知症高齢者にとって、規則正しい生活リズムは、生活の安定や睡眠の質を向上させることにつながります。また、リズムが整っていることで、認知症の症状の悪化を遅らせることができます。規則正しい生活リズムを維持する方法としては、毎日決まった時間に起床・就寝することや、食事や入浴、運動などの活動を一定の時間に行うことが挙げられます。

その⑥ その他のサポート

 ここでは、上記で触れてこなかった介護者本人のケアや環境面などのサポートについて書いてあります。より細かいサポートをする事で、本人がより良い生活を送る事が出来ます。

介護者自身のケア

 介護者自身もストレスや疲労をためないように、適度な休息やリフレッシュを心がけましょう。また、インターネットや医療機関などが主催する集まりを活用し、介護者同士の情報交換や支援を求めることも大切です。

在宅医療サービスの活用

 在宅医療サービスは、高齢者の健康管理や緊急時の対応に役立ちます。医療機関やケアマネージャーと相談し、適切なサービスを選んで活用しましょう。

居住環境の整備

 認知症高齢者にとって、安全で快適な居住環境が重要です。バリアフリー設計や照明の工夫、適切な家具配置などで、安全性や使いやすさ考えていきましょう。

リハビリテーションの提供

 リハビリテーションは、高齢者の身体機能の維持や向上に役立ちます。本人や家族だけでは、運動が難しい時や生活動作の獲得に向け、専門家と連携し、活用していきましょう。

外出機会を作る

 外出は、認知症高齢者の心身の活性化や社会参加につながります。適度な運動や自然との触れ合いがリフレッシュになります。しかし、外出時には、転倒や迷子にならないように注意しましょう。

介護用品の選び方や使用方法を学ぶ

 適切な介護用品は、高齢者の快適さや安全性を高めます。また、介護負担の軽減にもつながります。専門家や医療機関のアドバイスを参考に、機能や使い勝手を考慮して選びましょう。正しい使用方法を学び、効果的に活用してください。

まとめ

 認知症高齢者の介護には、身体的・精神的な負担が大きいことが一般的です。そのため、家族が無理をせず、適切なサポートを受けることが重要です。例えば、訪問介護やデイサービスなどの在宅サービスを利用することで、家族の負担を軽減することができます。

また、認知症高齢者の状況に応じて、入所サービス(例:グループホーム、特別養護老人ホーム)を利用することも検討すべきです。これらの施設では、専門的なケアが提供され、家族の負担を大幅に減らすことができます。無理をせず、家族の状況に合ったサービスを選択することが大切です。

最後に、この記事を読んでいただきありがとうございました。

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