この記事を読むことで、認知症高齢者が「ご飯を食べない原因と対策」について知る事が出来ます。
在宅介護の中でも、食事介助は大事なケアである反面、ムセ(誤嚥)や窒息などのリスクもあり、「食べこぼしが多い」「上手く食べれない」など介助負担が多い項目でもあります。
その中でも、「食べてくれない」「食事介助を拒否される」といった問題は、原因が分かりにくく対応が難しいと感じます。
しかし、問題が継続すると健康問題にもつながるため、早急な対応が必要です。しっかりとした知識を身につけ、対応できるようにしましょう。
「何故食べてくれないのか?」その原因と対策を解説
食べてくれない原因を考えた場合、「認知症の問題」「体の機能の問題」「環境の問題」「その他の問題」が考えられます。
原因によっては、1つの問題だけではなく、複数の問題が重なっている時もあるでしょう。また、人によっては原因が幾つもある時もあります。
解決していくためには、「考えられる原因を見つけ」→「対策してみて」→「解決しなければ、また他の原因を考える」。このサイクルを解決するまで繰り返してみましょう。
加齢や運動量の低下が、食欲低下を引き起こしている
歳を取ると、生活に必要なエネルギーは減少し、日々の運動量も減ってきます。そうすると、自然に食欲の低下が始まります。
特に認知症の人は、意欲の低下や無気力などの症状があるため、一般的な高齢者よりも活動量が低下する事があります。
対策① 運動量の確保
運動量の減少に対しては、色々と方法があります。まず、在宅で過ごされる場合は、なるべくベッドから起きて過ごす時間を増やしていきましょう。
すでに起きている方であれば、散歩をしたり、軽い運動が出来る時間を作りましょう。もし、在宅で行う事が難しいのであれば、デイケアやデイサービスなど、通所サービスの利用も考えてみましょう。
高齢になると、通所する事だけでも運動になります。(実際に、家では寝てばかりだからと、通所サービスを申し込む家族の方も沢山います)
また、通所サービスではリハビリや運動を提供しているところも多くあります。そういったものに参加すれば、さらに運動量を増やす事が出来るでしょう。
対策② 栄養補助食品の活用
病気などにより運動が難しい方や、加齢による食欲低下に対しては、少量でカロリーが確保できる、栄養補助食品の活用も考えてみましょう。
高齢者向けに、嚥下機能(食べる能力)が低下した人でも食べれる形態の物も多くあります。味の種類も多いので、喜ばれる方も多いです。
ドラッグストアーやネットなどでも簡単に買えますので、一度試してみてください。
上手く食べれない事で、食べる気が無くなっている
認知症高齢者が上手く食べれない原因として、「道具が上手く使えない」「食事形態があっていない」「姿勢がくずれてしまう」「口腔環境の問題」の4つを良く見かけます。
自分たちであれば、お腹が空いていれば、どうにかして食べる方法を考えるでしょう。
しかし、加齢により食欲が低下していたり、認知症により理解力の低下している人は、上手く食べれない状況になった時に、「もういいわ、食べない」となってしまう事があるので対策が必要になります。
しかし、これらの対策は、どれも専門的な知識が必要です。担当するケアマネージャー(介護支援専門員)や病院・施設などにいる専門スタッフに相談してみましょう。
対策① 食べやすい道具を準備する、食べる練習をする。
食事関連の道具は色々とあります。その人が困っている部分が解決出来る道具を準備しましょう。
手が上手く使えない人には、ばね付き箸や太柄のスプーン使ってみたり、上手くすくえない人には、淵の高い自助食器や滑り止めマットを使うと良い時もあります。
食事を上手に食べるための道具や、介助する時に役立つ道具は沢山あります。もし選ぶ事が難しいと感じたら、専門スタッフに相談してみましょう。
また、認知症があると道具の問題以外でも、食べる事が上手く出来ない場合があります。これは、認知症により「食べ方」や「道具の使い方」を忘れてしまっている場合です。
こういった時の対策としては、全て介助して食べてもらうか、繰り返し食べ方を練習する事になります。しかし、在宅介護では、介護や練習に使える時間も、そんなに多くは無いと思います。
そういった時は、通所や入所などのサービスを利用し、リハビリでの機能訓練や生活リハビリなどで、食べる練習をしましょう。
実際にどんな事をしてくれるのか気になる時は、ケアマネージャー(介護支援相談員)や施設に直接問い合わせをして相談してみると良いと思います。
対策② その人にあった、食べやすい食事(食事形態)を準備する
その人の嚥下機能(食べる能力)に合わせた食事形態を準備しましょう。
食事形態が合っていないと、上手く食べられないだけではなく、ムセ(誤嚥)や窒息の可能性も高まってしまいます。
作る事が難しい場合は、配食サービスや既製品もあるので利用しましょう。
また、食事形態を考えるのは、嚥下機能(食べる能力)の評価も必要になるため、家族だけでは難しい場合が多いです。担当のケアマネージャーや病院・施設にいる専門スタッフに相談しましょう。
対策③ 道具を使用して、姿勢くずれを予防する
高齢者は、筋力や体力が低下する事が原因で、左右に傾いたり、お尻が前にズレてきたりして、同じ姿勢でいることが難しくなります。
傾いたままでは、食事が食べにくいだけではなく、ムセ(誤嚥)や窒息の原因になったり、食べこぼしも増えるために、正しい姿勢に直す必要があります。
しかし、認知症があると、自分で直そうと言う気持ちも減ってしまい、姿勢を直す事に介助も必要になります。
そういった時は、道具を使用して姿勢がくずれにくくする事が大切になります。また、道具を使えば、姿勢を直す介助も減るため、介助量の軽減にも繋がります。
姿勢を修正するためには、傾く方向にクッションを入れて対応する事が簡単に出来ます。
しかし、それだけで難しい場合も多いため、U字クッションなど専用の道具を使ったり、姿勢を調整出来る座布団を試してみましょう。
使い方や道具の選び方には、専門の知識も必要になる事があります。担当するケアマネージャー(介護支援専門員)や専門スタッフに相談してみましょう。
また、購入だけではなく、介護サービスでレンタルが出来る物もあるため、ケアマネージャー(介護支援専門員)に確認しておきましょう。
姿勢を修正する道具について、もっと詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください
対策④ 口腔ケアの実施や義歯の調整で、口腔環境を整える
口の中の衛生管理がしっかりと出来ていないと、口内炎や歯周病の原因になります。口の中に異常があると、痛みや食べにくさにより、食べなくなる人がいます。
食後の口腔ケアをしっかりと行いましょう。認知症があると、やり方が雑になったり、歯磨きのやり方を忘れてしまう人もいます。歯磨きの後の確認や、必要な時は介助をしましょう。
また、義歯が合っていない事が原因で食べにくさを感じ、食べなくなる人がいます。合っていない義歯は、ムセ(誤嚥)や食べこぼしなどの原因にもなるため、調整したものを使用しましょう。
認知症があると、本人から訴えられない時も多いです。口腔ケアの時に口の中を観察したり、義歯が外れやすくなっていないかなど、日々の介助の時に注意して観察する事が大事です。
環境が整っていないと、落ち着いて食べれない
認知症高齢者は、自分たちが気にならないような事でも、そこに注意が向いて、過剰に反応したり、他の事が手につかなくなることがあります。
人によって、注意が向いてしまう刺激は様々です。どんな事に注意が向いてしまい、食事が食べれないのかを観察し、その人に合った環境に整えましょう。
対策① 食べる場所の環境を整える
食べる場所の環境は、特に大事にしたいところです。人の出入りが多かったり、色々なところから話声が聞こえたり、TVが付いてたりすると、そちらに注意が向き食事の手が止まる人は多いです。
食事場所は、あまり周囲が賑やかではなく、落ち着いて食べれる環境を作りましょう。
また、普段と違う場所で食べると、落ち着かなくなる人も居ます。出来る限り、いつも食事場所は同じところにしましょう。
対策② 食事前にトイレは済ませておく
尿便意を感じる事で、落ち着かなくなる人もいます。
介助をしていると、先に食事だけ食べて欲しいと思う気持ちもありますが、本人はトイレが気になって食事どころではなくなってしまいます。
トイレに介助が必要な人であれば、食事中にいく事になると介護の手間も増えてしまいます。食事の前に、一度トイレに誘導すると良いでしょう。
決まった時間にトイレに誘導する事は、尿意が曖昧な人に対して、失禁の改善が見込めると言われています。食事前にトイレに行く習慣を作ってみましょう。
生活パターン・間食により、お腹が減っていない
お腹が減らない原因は、加齢による食欲低下だけではありません。その人の生活パターンや間食の有無でも起こりえます。
施設であれば、事前にその人の情報をしっかりと把握しておく事が重要になります。在宅でも、介護のために同居を始める人であれば、事前にその人が、どのような生活を送ってきたのかを把握しておきましょう。
対策① 生活パターンを知る事が大事
人によって、食事の時間は色々です。早い人も居れば、遅い人も居ます。施設では、食事は決まった時間に提供される事が多いため、今までの生活パターンとずれていると、お腹が減ってなくて食べない人がいます。
可能であれば、その人に合った時間に少しでも近づけられるような配慮を行いましょう。また、朝はご飯じゃなくてパン食だったなども、メニューが決まっている施設では食べなくなる原因になります。
対策② 間食の量と、食べるタイミングに注意しよう
もともと、加齢により食欲が低下しているのに、間食する事でご飯が食べれなくなる人がいます。
施設では、管理しているところが多いため、あまり見かけませんが、在宅介護では良く聞く話です。
やはり、家族は好きな物を食べさせてあげたい気持ちが強く、本人が望むものを買ってきて渡してしまう人が多いです。
しかし、間食だけで栄養を補う事は難しく、食事摂取量の低下にも繋がります。渡す量を減らすとか、食事後に食べるようにするなどの工夫が必要だと思います。
「食べない」って、どんな問題があるの!?
施設では、食事摂取量の変化には、かなり気を使って対応します。
その理由としては、お腹が減らない原因に、加齢による食欲低下以外のもあるからです。食べない事が続く事で、色々な問題がありますが、急に食べない事の原因も大きな問題があります。
問題① 認知症高齢者にとって、体調不良のサイン!
自分の体調不良や思いを伝えられない認知症高齢者にとって、食事を食べない事が体調の変化のサインである事が多いです。
脱水であったり、寝不足、便秘など、体調の変化がある時に食欲低下のサインで教えてくれます。
いつも食べてくれる人が、急に食べなくなったら、何かしらの問題があると考えても良いと思います。
特に夏場は、脱水の前兆であることが多いです。水分は、水やお茶からだけではなく、食事からも摂取するので、脱水を悪化させる恐れもあります。十分に注意してください。
問題② 「活動量の低下↔更に食べない」の悪循環
食事量が減ってくると、栄養やカロリーが十分摂取出来ないだけではなく、体力や筋力が低下してきます。
そうなると、疲れを感じやすく日中寝ている時間が増えてきます。活動量が減る事で、さらに食事量が減る悪循環が始まります。
体力や筋力が低下する事で、病気になりやすくなったり、転倒の可能性も高まり、介護負担も増えていきます。正直、良いところはありません。
介護者の努力や気付きで予防できることも多いので、食事摂取量の変化には、注意しましょう。
食事の大切さ・・
この記事では、「認知症高齢者が食事を食べない」原因と対策、また「食べない」事についての問題を解説しました。
食事は、楽しみであり、生きていく上で大切な事でもありますが、認知症高齢者にとっては、体調管理にもつながる大切なサインにもなります。
また、食べない事が続けば、本人の健康問題だけではなく、介護負担にも繋がります。
細かい所に配慮が必要な対策も多いですが、家族や施設が注意して観察すれば、対応出来る事だと思うので、頑張りましょう!
最後に、この記事を読んでいただき、ありがとうございました。