自宅介護は、本当に簡単なものではないです。この記事では、認知症の方を自宅で介護した時の「限界を感じる5つの問題点と対応方法」や「限界の目安」や「限界が来ないための準備と5つのステップ」について書いてあります。
自宅介護に限界を感じる5つの問題点
自宅介護に限界を感じる問題点を、5つにまとめてみました。これから、どんな問題が起きるのか、先に予想する事で対応が出来るのではないかと思います。ぜひ、参考にしてみてください。
1.肉体的な負担
介護が肉体的な負担が大きい事は、皆さん想像が付きやすいと思います。実際に介護職の人を見ていても、腰痛や肩の痛みで悩んでいる人が多いです。具体的には、ベッドから起こしたり、車いすの乗り移りの介助やトイレでの介助など、体を持ち上げたり、支える介助は1日のなかで何度も繰り返されます。また、在宅介護は休みが無いため、体をゆっくりと休める時間も取りにくいです。夜間のトイレ介助などがあると、睡眠不足にも悩まされます。それが毎日続く事で、肉体的負担が大きくなります。
2.精神的な負担
介護は、肉体的な負担だけはなく、精神的な負担も大きくなります。介護している人の健康を気に掛けていたり、何かの問題が起こらないか、見守りが必要な時もあります。一人で介護をしている方は、他の家族や親族からのプレッシャーや孤独感を感じる人もいます。そうやって、常に周りに気を使う時間が、精神的なストレスとなり、ひどくなると、うつ病や不安障害などの精神疾患を発症したり、虐待に繋がってしまう事もあります。
3.経済的な負担
在宅での介護は、施設入所に比べると、金銭的負担は軽いと言われています。それでも、介護が重度になってくると、受診のために介護タクシーをレンタルしたり、自宅での生活を継続するために、レンタル用品や訪問サービスなどの利用が必要になってくる事が多いため、経済的負担は増えていきます。また、介護負担が増える事で、仕事を休んだり、最悪辞める必要が出てくると、収入が減ってしまい、さらに経済的負担を増やすことになります。
4.時間とプライバシーの制限
介護負担が増えてくると、介護者の仕事やプライベートな時間までを介護に使う必要が出てきます。そうする事で、自分の趣味や外出などが制限されるようになり、仕事も休む必要が出てきます。また、そういった事が続くと、他の家族との関係が悪化したり、社会との繋がりが減る事で孤立感が強くなる事もあります。
5.専門的なスキルの不足
介護が重症化してくると、医療的な知識や特定の介護スキルが必要な事が増えてきます。しかし、ほとんどの家族は、そのようなスキルを持ち合わせてはいません。(当たり前ですが、自分もリハビリの仕事をしていなければ、今のような知識やスキルは持っていなかったと思います。)しかし、知識が不足していることで、色々なリスクが発生します。例えば、適切なケアを行わない事で、床ずれ(褥瘡)が悪化したり、食事中に、ムセてしまい誤嚥性肺炎を発症したり、乗り移りの時に転落して骨折してしう事もあります。また、無理な介護をする事で、介護者の腰痛や肉体的負担を増やしてしまう事もあります。
いつまで頑張ればいいの?「自宅介護の限界点を知っておこう!」
自宅介護を始めた時には、問題点と一緒に、どこまで続けられるのか、限界も知っておいて欲しいと思います。いつまで頑張れば良いのか、先が見えない介護は、正直気持ち的にもつらいです。限界点を知り、そこを自宅介護のゴール(終わり)にしても良いと思います。また、頑張りすぎて、うつ病を発症したり、虐待してしまっては遅いです。もちろん、人によって限界は違うと思いますので、ここでは、自分が考える限界が近づいている、または限界が来ていると思うポイントについて書いています。このサインが来たら、何かしらの対応を考えて欲しいです。
限界が近づいた時に、どんな対応をしたらいいのか?
いくら、頑張っても限界が来る時はあります。そう感じた時は、無理をせずに何かしらの対応をするべきだと思います。次は、先ほどあげた限界が近いポイントが来た時に、実際どんな対応が出来るのかを書いていきます。自分が出来る事は何か、何が足りないのかを考えるヒントにしてみてください。
自身の気持ちや状態を再確認する
入所や通所を申し込みに来てから、後で断られる方がいます。一時の感情で動いてしまい、冷静に考え直した判断であれば良いのですが、その後さらに悪い状況になってから、再度申し込みに来る人もいます。自分は、そういう時は、一時は自分の限界を感じ、申し込みに来たが、家に帰ってから介護している人の顔を見ていると「もう少し、頑張ってみよう」と思い直したのかなと思っています。やはり、最愛の家族が相手では、そんな感情になる事はとても共感が出来ます。だけど、やはり無理をする事には反対です。介護される側にもリスクがありますし、介護者自身も大事にして欲しいからです。一度無理だと感じたのであれば、きっとそれは心の安全装置が働いたのだと思います。自分の心も体も疲れ切っている事、介護の負担が大きくなりすぎている事を再認識し、適切な対応を行って欲しいです。
周囲に助けを求める
助けを求める相手は、主治医やケアマネージャーなどの専門職や家族です。専門職には、現状をしっかりと説明する事で、専門的なアドバイスをもらえる事でしょう。それは、きっとあなたの助けになるはずです。また、家族には自分が感じている介護負担や現状をしっかりと伝え、協力を求めましょう。家族が難しいのであれば、自分の兄弟でも構わないと思います。友達でも構わないでしょう。人に話を聞いてもらうだけでも、落ち着ける事もあります。また、周囲に頼れる人が居ないのであれば、地域包括支援センターや地域の福祉課など、公共の施設を使う事もおすすめできます。ここにいる人達も専門職の方です。きっと、あなたの悩みを聞いてくれると思います。
在宅サービスの利用
訪問介護サービスや訪問看護サービスなどを利用する事も良い方法です。自分が出来ない、医療的なケアや介護ケアを代わりに行ってくれます。もし、すでに利用しているのであれば、利用機会を増やす事も良いと思います。また、一時的に入所が可能なショートステイもおすすめです。最大1ヶ月程度の入所が可能なので、ゆっくりと休息を取る事が出来ると思います。また、デイサービスやデイケアなど通所系のサービスも、日中一人になる時間が作れるため、おすすめできます。
入所サービスを利用する
特別養護老人ホームや介護老人保健施設へ入所します。専門職が24時間のサポートを行ってくれるため、介護者も介護される方も安心して生活を送る事が出来ます。色々な種類があるため、ニーズにあったものを選ぶ必要があるため、ケアマネージャーなど専門職に相談すると良いと思います。また、在宅介護と比較すると、金銭的負担は増える事が多いです。
限界が来ないための準備と「5つのステップ」
限界が来る原因や、来てからの対応を書きましたが、もっと大事なことは限界が来ないようにする事だと思います。ここでは、限界がこないための方法を解説していきます。自宅介護を続けている方、これから始めようと思う方は、ぜひ読んでみてください。
準備① 要介護認定を受ける
自宅介護を続けるのであれば、介護用品のレンタルや介護サービスを利用する事になると思います。認定を受けていないと、サービスの利用が難しいため、受けておきましょう。申し込みは、市区町村にある地域包括支援センターや、役所の高齢者福祉窓口で可能です。
ステップ① 状況の評価と準備
まずは、主治医やケアマネージャーに相談し、本人の状態を確認し、必要な介護のレベルを理解しましょう。そのうえで、自宅での介護が可能なのか、もし介護するのであれば、どのようなサポートが必要なのかを評価します。ケアマネージャーと今後の生活パターンを踏まえ、必要な介護サービスやレンタル出来る介護用品などを決めていきます。
ステップ② 資金計画
介護を行っていくには、資金が必要です。計画したサービスを利用するには、どのくらいの金額が掛かるのか、どうやって準備するのかを考えていきます。相談しにくい事ですが、兄妹や親類ともしっかりと約束しておくことが大事だと思います。介護がスタートしてからでは、上手く話しが進まず結局介護者が全て負担する羽目になる可能性もあります。例えば、施設に入る時はすべてにかかる費用を兄妹で割るとか、介護者が仕事を休んだり、辞める必要が出てきた場合は、給料分を他の親族で補填するなど、出来るだけ色々な事を想定して、詳しく決めておくことが重要です。嫌な話ですが、お金の問題は本当に良く耳に入っていきます・・・。
ステップ③ 住宅改修や環境調整・介護用品の準備
ステップ①で、ケアマネージャーに相談後の話になります。在宅生活で必要な介護用品の準備を行っていきます。車いすや歩行器などのレンタル品を決めたり、レンタル用品だけではカバーしきれないような段差の解消や、手すりの設置なども考えていきます。ポータブルトイレや入浴で使うものはレンタル出来ないものも多いため、購入になりますが介護保険で補助の対象になります。退院後であれば、担当のリハビリスタッフなどが在宅訪問を実施し、相談や提案をしてくれるはずなので、気軽に聞いてみましょう。また、寝室を2階から1階に移す。トイレに近い部屋に居室を移すなども必要に応じて考えましょう。
ステップ④ 介護技術の習得
自宅介護で必要になる介護ケアや医療ケアの方法を学ぶ必要があります。自宅介護では、自己流で行う人が多いのですが、医療ケアは専門職からのアドバイスは必須だと思いますし、無理な介護方法は、腰痛などを引き起こします。また、転落などで介護される方が骨折するリスクもあります。習得場所としては、地域の公的機関やNPOが開催する介護講座などもあります。また、直前まで入院などしている場合は、病院や施設で在宅復帰前に教えてもらう事が出来ると思います。施設で働く自分からすると、家族指導は、家族からの依頼が無くても行うべき事だと思いますが、実際依頼しないと行ってくれない施設や病院もあるようなので、その際は依頼すると良いと思います。
ステップ ⑤状況の見直しと調整
家族の生活スタイルや介護される方の身体的な変化などにより、介護は常に変化していきます。必要なサービスが増えたり、追加の介護用品のレンタルが必要になる時もあります。常に、ケアマネージャーなど専門職との連絡手段を確保しておき、状況にあわせ対応していきましょう。また、介護負担軽減を目的とした、レスパイト入院や、短期間の入所が可能なショートステイ、通所サービスや訪問サービスなどの事も頭に入れておくと、素早い対応が可能になると思います。これらのサービスは、施設側の調整も必要になる時があるため、必要になりそうな時は、はやめにケアマネージャーなどに相談しておくと、スムーズな利用が可能になると思います。
まとめ
自宅介護の限界を感じたら、まずは自分の状態を評価し、助けを求めましょう。在宅サービスや入所サービスの利用も選択肢の一つです。そして、要介護認定を受け、状況評価と資金計画、住宅改修や介護技術の習得など、5つのステップを踏むことで、限界を先送りにする事も可能です。自宅介護は、自分だけで頑張るものでないです。自分だけが我慢するものでもないです。周りのサポートを最大限に活用し、自分を1番に考えた介護を頑張ってください。
最後に、この記事を読んでもらえて感謝します。ありがとうございました。