自宅介護を始める時、部屋の選択はとでも大事です。介護を受ける方の安全や快適性を保ちつつ、日常生活をスムーズに進めるための環境整備が必須です。そのためには、「部屋の広さや立地」、「レイアウトの工夫」、さらには「適切な介護用品や家具の選定」など、多方面にわたる検討が必要です。今回は、失敗を避けるための部屋選びの注意点から、安全性と利便性を両立した部屋のレイアウト、そして自宅介護で活用できる介護用品や道具の紹介を行います。
失敗しない、部屋の選び方
生活を始めてから色々と不満が出てくる事は仕方のない事です。しかし、何度も部屋を移動するのは面倒です。そうならないためにも、事前にどんな部屋が介護に適しているのかを知っておく事が大切だと思います。ここでは、部屋選びのポイントを紹介していきます。ただ、全てがそろった部屋を準備するのは現実的では無いと思います。選択する時の参考にしてください。介護用品を使ったり、介護の方法を工夫する事で解決できる事もあります。
1.部屋の広さは、6畳から8畳程度
高齢者施設の施設基準を参考にすると、6畳~8畳くらいが目安では無いかと思います。介護される方の状態にもよりますが、車いすや歩行器で移動する事になると、ベッドなどを置いた後でも、ある程度の広さが必要になります。また、介護のしやすさを考えた場合にも、ある程度の広さが必要になります。
2.トイレや台所などに近い部屋
利便性や介護負担、転倒の可能性を少しでも減らす事を考えると、必要な場所への距離が近い方が良い思います。具体的な必要な場所とは、「トイレ」「台所」「洗面所」「お風呂」「玄関」などです。本人の生活スタイルに合わせた優先順位を決めて、その場所に近い部屋を選びましょう。また、夜間の介護も必要な方は、介護者の部屋の近くも良いと思います。
3.安全性を配慮(床材や段差の有無など)
転倒の可能性を少しでも低くするために、安全性に配慮する事も大事です。すべりにくい床材や、段差が無い部屋が良いと思います。また、出入り口も考える必要があります。車いすや歩行器を使用するのであれば、なるべく間口が広く段差がない部屋を選びましょう。また、扉の開け閉めも重要です。ドアノブが持ち易く、操作しやすいものが良いでしょう。
床材に問題があれば、引っ掛かりにくい材質の絨毯を敷いてしまう事でも良いと思います。ただ、中途半端に敷くと、引っ掛かる恐れがあるので、部屋全体に敷き詰める方が良いと思います。しかし、食事の食べこぼしや、ポータブルトイレを設置した時の周囲の汚れなどを掃除する事を考えると、フローリングなどが楽だとは思います。
4.快適性を考える
高齢者になると、日中は部屋で過ごす時間が長くなると思います。そのため、快適性を考えることも大事です。例えば、部屋に光が差し込む、夏は風通しが良い、部屋全体を、しっかりとした照明が照らしてくれるなどです。また、騒音が大きいと安眠や休息のじゃまになります。道路に近い部屋などは避けた方が良いと思います。
使いやすく安全な、部屋のレイアウトとは?
自分たちの部屋であれば、見た目や快適さだけで家具のレイアウトを決めていくと思います。しかし、自宅介護の事を考えると、介護される方の安全面であったり、介護者の介護負担の軽減も考える必要があります。ここでは、安全面・介護負担も考慮した、部屋のレイアウトの考え方を紹介します。
ベッド・その他の家具の配置
ベッドを配置する際は、まず介護が楽に出来るように左右にスペースを空けておきましょう。体の向きを変えたり、オムツ交換の時に必要になります。また、病気や身体機能により、起きやすい方向というものが出てきます。本人が右・左のどちらが起きてきやすいのかを事前に担当医や専門職に確認し、そちら側から起きれるようなベッドの配置にしましょう。
また、頻回に触る家具は、本人が自立して移動出来る場所に配置し、移動距離も短くしましょう。また、移動ルートは直線的にする事で転倒の可能性を減らせると思います。
通路は、必要な広さを確保し整頓する
車いすや歩行器の移動を考える場合は、通路の広さも確保しましょう。また、転倒の原因になるため、足元にはコードや小物を置かない様にしましょう。広さを確保したうえで、手すり代わりに家具を置くのも良いです。
自宅介護で使える、便利な介護用品や家具の紹介
今は、色々便利なものが気軽に買えたり、介護保険でレンタルが出来ます。ここでは、あると便利だったり、安全性が向上すると思うものを紹介していきます。よかったら、参考にしてください。
介護用ベッド
自宅介護するのであれば、これは本当に便利です。高さ調整出来る事で、介護負担軽減にもなるし、介護される方の体の負担も軽減出来ます。介護保険でレンタル可能ですが、基本的には要介護2以上が必要です。2モーター・3モーターと種類があり、高さ調整+頭側の調整が出来る物と、足側の調整も追加されたものがあります。ベッド上で食事をとる方は、頭側だけ持ち上げると体が下にずれて来てしまうため、足側の調整も可能なものが良いと思います。
センサーマットや離床センサー付きベッド
前者は、ベッドの下に設置するマットで、後者はベッドに追加された機能です。どちらも、ベッドから起きた時にアラームなどで介護者に知らせてくれます。認知症などがあり、一人で安全に移動やトイレが出来ない高齢者や、外に出てしまう危険のある方に対して使用する方が多いです。ただ、知らせる事で逆に家族への負担が増える事もあります。夜間使用する方は、睡眠不足になる可能性もあります。オン・オフの切り替えもあるため、昼間だけ使用するなど、使用頻度も考慮しましょう。また、センサーマットであれば、部屋の入口に置く事で、外出のみを管理する使い方も出来ます。
ポータブルトイレ
これは、よく耳にする名前だと思います。トイレまでの移動が難しい方がベッド横に置いて使用出来る簡易トイレです。後始末やにおいが気になる方も多く使用をためらう方も多いですが、便利な介護用品だと思います。今は、脱臭作用のあるものや水洗のものもあるそうです。基本的には、介護保険でもレンタルできませんが、購入後に補助がおりると思うので、ケアマネージャーや福祉課などに相談すると良いと思います。
オーバーテーブル
良く病院に置いてある、キャスターのついたテーブルです。移動も楽で、ベッドを跨いで使う事が出来る設計なので、ベッド上で食事をとる方は、よくレンタルされています。
ナースコール
これは、介護される方が自分の意志で、家族と連絡を取る時に使用します。部屋が離れていると、なかなか声が届かない時があります。また、部屋で転倒した時などに呼びに行きたくても行けない時もあるため、緊急用に準備される方もいます。介護保険でのレンタルもありますし、いまはネットでも安く手に入れる事が可能だと思います。
人感センサーの照明
夜間トイレに行く方は、とても便利です。うちの施設でも良く使っています。介護ベッドのフレームは鉄製なので、マグネット付きのものが300円ほどで、100均などで買えます。
※100均で売ってますが、100円で売ってるのは見たこと無いです(笑
設置型の手すり
手すりが必要な場所へ、設置型の手すりがレンタル出来ます。住宅改修も必要なく、設置型なので必要無くなれば撤去も簡単です。玄関や部屋の入口の段差解消用に、足台+手すりが付いたものもあります。
移動補助具
部屋の中の移動で使用できるものは色々あります。よく見かける車いすや杖もそうですし。歩行を介助してくれる。前腕支持型歩行器やラビット型歩行器、ピックアップウォーカーなど多種多様です。本人の歩行能力だけではなく、自室の環境に合わせてレンタルする事も大事です。専門スタッフに相談すると良いでしょう。
その他の介護用品
上記で紹介したもの以外にも、段差解消スロープや滑り止めマット、ベストポジショニングバーなど環境や能力に合わせた物が沢山あります。全てを紹介しきれませんが、こんなものが合ったら良いなと思うものは、結構探すとあるものです。自分で分からない時は、ケアマネージャーや専門スタッフに相談してみましょう。
まとめ
自宅介護での部屋選びは、機能性だけではなく、利用する人の快適さや安全性も考える必要があります。広さ6~8畳程度の部屋を選び、トイレや台所などの必要な場所が近い場所、安全面を考えた床材や段差のない部屋が理想的です。また、適切なレイアウトにより、日常の行動がスムーズになります。介護用ベッドやポータブルトイレ、ナースコール、人感センサーの照明など、便利な介護用品や家具の導入も助けになります。これらを踏まえて、部屋を選び、環境を整える事で、自宅介護をより円滑で安全なものにすることが出来ると思います。ぜひ、これらのポイントを参考に、適切な環境を整えてみてください。
この記事を最後まで読んでくれて、ありがとうございました。