家族のみなさん、高齢者の施設入所は、どういった理由で必要になるのでしょうか?自宅での介護を続けると何が問題なのでしょうか?そして、どのような施設があるのでしょうか?この記事は、そんな疑問の答えを出せる事を目指しています。また、家族が抱く様々な疑問を解消するためのQ&Aも用意しました。高齢者やその家族が適切な介護選択を行えるように、専門職としての知識や、これまでの経験を元に情報を発信しています。この記事を読み終わった時に、あなたの疑問が1つでも解決出来ている事を願っています。
家族や高齢者が、施設の入所を希望する理由とは?
入所の理由は、家族の介護負担軽減と高齢者の安全の確保が主になると思います。ここでは、その理由を少し掘り下げて5つにまとめてみました。
理由① 高齢者の身体的・認知的な変化
高齢になると、体の機能が弱くなり、色々な問題が出てきます。例えば、歩くスピードが遅くなる、つまずきやすくなる、または手元が不安定になり物を落とすことが増えるなどの現象が見られます。さらに、認知症が進むと、日常生活の基本的な部分も難しくなります。例えば、近所の道でも迷うことがあったり、電気のスイッチをガスの火つけっぱなしにしてしまうことがあるかもしれません。このような状況になると、家族は、高齢者の安全を守るために常に気を配る必要が出てきます。しかし、家族も仕事や自分の生活があるため、24時間体制でのサポートは難しいでしょう
このような状況になったとき、介護施設は一つの安心できる選択肢となります。介護施設には、高齢者の日常生活をサポートするための専門的な知識と経験を持ったスタッフが常にいます。彼らは、身体的な支援だけでなく、認知症の方が安全に生活できるように注意深く見守ります。施設での生活は、身体的な援助を必要とする方だけでなく、認知的なサポートを必要とする方にも、安心して生活できる環境だと思います。また、家族にとっても負担を軽減できる選択肢となります。
理由② 家族構成や生活スタイルの変化
高齢者の介護は、家族や介護者にとって大きな負担になる事があります。家族構成や生活スタイルの変化も、介護負担に影響します。現代の家族構成は多様化しており、核家族や単身世帯が増えています。子どもが遠くに住んでいたり、共働きの家庭であれば、より介護を難しくなります。また、介護にかかる時間や労力は、家族が持つ余裕やストレスに大きな影響を与えます。
そこで、介護施設への入所です。高齢者の安全と自分たちの生活の両立が図れる選択肢になります。施設では、専門のスタッフが24時間体制でサポートしてくれるため、家族の負担が減り、心身の疲れも軽減されます。また、家族同士のコミュニケーションや関係も、介護のストレスから解放されることで改善されることが期待できます。
理由③ 在宅の生活環境が整っていない
生活環境は、高齢者にとって大事な問題です。段差が多い家では、転倒リスクが高くなります。また、車椅子や歩行器を利用することが難しくなり、高齢者の移動が制限されてしまいます。他にも、バスルームに手すりがないと、入浴時の転倒リスクが高まり、家族が常に付き添わなければならない場合があります。家族から見ると、高齢者の住む家が安全でないと、心配で仕方がないと思います。
高齢者自身も、生活環境が整っていない事で、ストレスや不安を感じることがあります。自宅での生活が困難になると、自立心が失われるだけでなく、家族への負担を気にするようになるかもしれません。
介護施設に入所すれば、バリアフリー設計や手すりが整った環境で暮らすことができます。これにより、家族は高齢者の安全を確保できるだけでなく、高齢者自身も安心して生活できる環境が整います。また、施設内では、高齢者が自立した生活を送るためのサポートが提供され、家族も安心して任せることができます。
理由④ 高齢者(親)の社会的な孤立
社会的孤立は、高齢者にとって深刻な問題です。友人が亡くなったり、家族と離れて暮らすことで、寂しさが増します。家族から見ると、高齢者が社会的孤立に陥ることは、心配事の一つです。また、同居している場合でも、家族が忙しくて十分な時間を割けない場合は、高齢者の孤立感が強まります。
高齢者自身も、孤立感が強くなることで、認知症症状が強まったり、うつ病などのリスクが高まることがあります。さらに、生活意欲や健康状態も低下する可能性があります。
介護施設では、他の入所者と一緒にお茶を飲んだり、カラオケを楽しんだりして、新しい友達ができます。こうしたコミュニケーションが、高齢者の孤立感を軽減し、心身の健康状態を維持する助けとなります。家族も、適度に施設に面会に行く事で、本人との関係性を維持する事が出来ます。
理由⑤ 病気の治療やリハビリなど、専門的なケアの必要性
病気やケガは、高齢者にとって、その後の生活を大きく変化させます。特に骨折や脳梗塞などは、退院後も継続したリハビリやケアが必要な事があります。しかし、家族に専門的な知識や技術がない場合、十分な対応が難しいことがあります。また、家族が仕事などで忙しい場合、病院への送迎などが出来ないため、高齢者がリハビリに専念できないこともあります。
高齢者自身も、十分なケアやリハビリが難しい場合、回復に対する不安や焦りを感じることがあります。自分の身体が思うように動かないことに、ストレスや不安を感じたり、介護する家族に罪悪感を感じることもあります。
介護施設に入所すれば、専門のスタッフがケアやリハビリをサポートしてくれます。これにより、家族は高齢者の治療やリハビリをプロに任せることができ、安心する事が出来ます。また、高齢者自身も、専門家による適切なケアを受けることで、回復への期待と安心感が高まると思います。
家族や高齢者が、入所を決断したタイミグは?(4つのケース)
ここでは、家族がどんなタイミングで介護施設への入所を決断したかについて、自分が相談された4つのケースの話をします。入所の決断が遅れると、介護を担当する家族や高齢者自身にも、色々な問題が生じる事があります。そういった問題を防ぐため、また適切なタイミングで決断が出来るように、ここでの話を参考にしてみてください。
ケース① 仕事と介護の両立が難しくなった
自分の親に介護が必要になってきたが、フルタイムで働いているため、仕事と介護の両立が難しくなってきました。朝の身支度や夜間のトイレ介助など、24時間体制の介護が必要になりはじめました。最初は頑張っていましたが、自分の体力も限界が近くなり、仕事も休みがちになりました。このままでは、自分が潰れてしまうと考え、親の入所を決断しました。
ケース② 親の一人暮らしが難しくなった
親が一人暮らしをしていたが、加齢に伴い家事が困難になり、食事の準備や掃除ができなくなってきた。最初は、時々家に通って手伝っていましたが、徐々に歩行も不安定になり、家の中でも転倒やケガのリスクが高まってきました。親の安全を確保するため、家族が高齢者施設への入所を決めました。
ケース③ 徘徊が始まり、安全管理が難しくなった
認知症が進行し、親が家の中を徘徊をするようになりました。このままでは、家族が外出している間に親が一人で外出し、道に迷ったり、交通事故に巻き込まれる危険が出てくると考えました。しかし、家族だけでは、24時間体制での安全管理が難しいと判断したため、施設への入所を決めました。
ケース④ 病気などにより専門的なケアが必要になった
親が脳卒中で倒れ、片麻痺になりました。入院中に、床ずれ(褥瘡)もできてしまいました。在宅退へ院後は、片麻痺に対する介助方法や褥瘡治療のための医療的な知識などが必要になりましたが、家族だけでは十分なケアができないと判断し、医療スタッフが常駐する高齢者施設への入所を決めました。
自宅介護を無理に続けた時に、家族に起きる問題とは?
適切な対応が出来ないまま、自宅介護を続けた場合に、どんな問題があるのでしょうか?
介護者の身体的・精神的ストレスが増悪する
介護の中身は、肉体労働的なものが多くあり、精神的な負担も大きいと思います。例えば、重い体を支える、食事の準備、排泄の介助などの肉体的な負担、そして介護対象者の体調変化や言動に一喜一憂することでの精神的な負担などがあります。このようなストレスが長期化することで、腰痛や不眠、うつ病などの症状が生じる事があります。
介護者の社会的孤立が強まる
介護のために、自分自身の時間と体力が必要になり、自分自身の社交生活が制限される事があります。友人との交流、趣味の時間、リラクゼーションの時間などが減少し、これにより孤立感やストレスが増大します。また、介護に対する不満や意見の違いから生じる、家族や親類との対立も、孤立感を強くする事があります。
仕事の継続が困難となる
介護が始まるタイミングは、自分の年齢に関係なくやってきます。自分が働き盛りの年齢であれば、介護と仕事の両立は、特に難しいと思います。介護による休職や退職はキャリア的にマイナスになると思いますし、将来的な収入の減少につながる事もあります。また、自分の夢を諦める必要も出てくる可能性があります。ほかにも、介護と仕事を両立させるために無理をし過ぎると、過労やストレスからくる健康問題を引き起こす可能性もあります。
親(高齢者)や親族との関係性が悪化する
介護は肉体的、精神的な負担だけでなく、介護者と被介護者の間の人間関係にも影響を及ぼす可能性があります。特に、介護者が被介護者の親族である場合、介護の負担やストレス、意見の相違などが原因で人間関係が悪化することがあります。このような状況が長く続くと、介護者のストレスを増大させ、被介護者にとっても精神的な苦痛をもたらします。
どんな施設を選んだらいいのか?入所施設の選び方を目的別に解説!
目的別に、主要な高齢者施設を自分自身の経験から選んでみました。もちろん、費用や詳細は、地域差や施設の経営方針などで変わってきます。詳細を知りたい場合は、施設に直接問い合わせをしたり、地域包括支援センターや自治体に相談しましょう。あくまで、施設を考える時の参考程度に見てもらえると嬉しいです。
リハビリをして、また家で生活したい
介護老人保健施設 | |
特徴 | ・リハビリ専門職(理学療法士など)がいる ・介護士や看護師がいるため、介護と医療面のケアも充実している ・基本的には、入所期間は3ヶ月(施設により、長期入所も可能) ・最長1ヶ月のショートステイサービスがある ・通所サービスがある ・集団生活のため、他者との交流が多い |
メリット | ・リハビリが充実している ・公的施設のため、費用の一部が助成される ・短期間のレスパイト(介護負担軽減)に向いている ・入所期間が原則決められているため、入所しやすい |
デメリット | ・原則、長期入所は難しい ・集団での生活のため、自分のペースで生活したい人には向いていない |
入所条件 | ・65歳以上+要介護1~5 ・特定疾病により、要介護認定を受けている |
月額費用 | ・10~15万程度 |
認知症があって一緒に住むことは難しいけど、自分の事はある程度出来る
グループホーム | |
特徴 | ・本人の自立生活を促してくれる事で、認知症の進行予防にもなる ※必要時に、スタッフの助けはあります ・リハビリスタッフや看護師が居ない施設もある ・定員が少なめのため、少人数での交流が多め |
メリット | ・支援を受けながら、自立的な生活が送れる ・認知症ケアが充実している ・長期的な入所が可能 ・少人数での交流がメイン |
デメリット | ・リハビリや医療面のケアは難しい ・定員が少ないので、入居が難しい(順番待ちが多い) ・入居の一時金が必要 |
入所条件 | ・65歳以上+要支援2以上または、要介護1~5+認知症の診断 ・施設のある、市区町村に住民票が必要 ・集団生活が可能 など |
月額費用 | ・11~13万程度 |
サービス付き高齢者住宅(一般型) | |
特徴 | ・基本的に自立生活が可能な高齢者が利用 ・定期的に居室を訪れ、安否確認をしてくれる ・生活相談のサービスが受けられる ・介護サービスなどは、外部サービスを利用 ・施設によっては、食事提供のサービスを行っている |
メリット | ・安否確認のサービスがある ・長期的な入所が可能(要介護度が上がると退去の可能性あり) ・施設数が多いため、選択肢が多く、入居しやすい |
デメリット | ・要介護度が高いと、入居出来ない事がある ・入居後に、要介護度が上がると退去させられる時がある ・入居の一時金が必要 |
入所条件 | ・60歳以上 または、 60歳以下で要介護認定を受けている人 ・施設によって、細かな条件を設けている所があります |
月額費用 | ・10~20万程度 |
医療面や介護面での負担が大きく、在宅での介護は難しい
介護付き有料老人ホーム | |
特徴 | ・要介護者のみ入居できる ・介護サービスや医療ケアが充実しているところが魅力 ・施設により、費用やサービス内容が大きく違う時がある ・看取りケアをしている施設も多い |
メリット | ・長期の入所が可能 ・施設が多く、入居しやすい ・サービスや設備が充実しており、入居者の満足度が高い |
デメリット | ・数が増えた事で、施設の質に差があるため注意が必要 ・入居費用が高め |
入所条件 | ・要介護1以上 |
月額費用 | ・15~30万程度 |
「Q&A」家族が考える、施設入所の疑問や不安とは・・・
ここでは、自分が家族に質問された事や、気に掛けると良いと思う事をQ&Aの形で書いていきます。
- Q介護施設を選ぶ際に、何を最も重視すべきですか?
- A
介護施設の選択において、最も重視すべきは本人のニーズと期待に合っているかどうかです。
- Q施設選びで失敗しないためには、何をすべきですか?
- A
施設の見学を何度も行い、質問をたくさんすることが重要です。また、本人の意見と感じ方を尊重することも大切です。
- Q本人が施設に移ることに抵抗感を持っています。どうすれば良いですか?
- A
本人の気持ちを尊重し、施設生活のメリットや安心できる点を説明すると良いです。また、移住後も家族が定期的に訪問することを約束すると安心感が増すかもしれません。
- Q本人が自宅での生活を強く希望していますが、介護施設に移るべきか迷っています。どうすればいいですか?
- A
本人の希望を尊重しつつ、現実的なケアの必要性とリスクを評価することが大切です。介護施設だけでなく、訪問介護やデイサービスなどの選択肢も検討してみてください。
- Q施設の清潔さはどの程度重要ですか?
- A
非常に重要です。清潔な環境は感染症のリスクを減らし、全般的な生活品質を向上させます。
- Q本人が特別な食事制限を持っている場合、どのように確認すべきですか?
- A
施設に直接問い合わせて、特別な食事制限に対応できるかどうかを確認する必要があります。
- Q病気や障害が進行した場合でも対応できる施設を選ぶべきですか?
- A
はい、可能な限り長期的な視点で施設を選ぶことが理想的です。今後の健康状態の変化にも対応できる施設を選ぶと安心です。
- Q施設の料金体系はどのように確認すべきですか?
- A
施設に直接問い合わせるか、公式ウェブサイトで確認できます。不明点があれば、はっきりと説明を求めることが大切です。
- Q本人がペットを飼っています。ペットと一緒に生活できる施設はありますか?
- A
はい、ペット対応の介護施設も存在します。しかし全ての施設がペットを許可しているわけではないので、事前に確認が必要です。
- Q施設の居住者の幸せ度をどのように評価すべきですか?
- A
見学時に居住者と話す機会があると良いです。また、居住者やその家族からの口コミも参考になります。
- Q施設のロケーションはどれほど重要ですか?
- A
施設の立地は家族が訪問しやすいかどうか、周辺にどのような設備やサービスがあるかに影響します。したがって、非常に重要です。
- Q施設選びで家族が一番心配することは何ですか?
- A
家族は通常、愛する人が安全で、適切なケアを受けて、尊厳を保った生活ができることを最も心配します。
- Qどの程度の医療ケアが提供されていますか?
- A
それは施設によります。一部の施設では、看護師や医師が常勤していて、緊急の医療ケアに対応できます。
- Qスタッフとのコミュニケーションはどのように確認すればいいですか?
- A
見学時や問い合わせ時にスタッフとの対話を通じて、彼らが患者に対してどのような態度を持っているかを確認します。
自分を大事にする事が、高齢者を大事にする事につながる
介護では、「自分を1番大事にする」事が必要だと思っています。結局のところ介護する側に限界がくると介護される側にも、色々な問題が出てきます。介護の質の低下や家族関係の悪化、虐待を引き起こす事もあります。ニュースを見ていると、いたたまれない事件の背景に介護の問題が見え隠れしている事もよくある話です。介護の世界では、自分を犠牲にして限界が来るまで頑張ってしまう人が多いです。別に施設への入所だけが解決する方法では無いです。しかし、1つの解決策である事は確かです。本人の拒否や入所させる事の罪悪感もあると思います。簡単な事では無いと思いますが、自分の限界が来る前に是非考えて欲しい事だと思います。
最後に、この記事を読んで頂き、ありがとうございます。