最適な介護施設を選ぶための、施設見学マニュアル。「見てくるところ」と「聞いてくるところ」

見学から入所までの流れが書いたマニュアル

 介護施設を選ぶ時に、見学は必須だと思います。ただ、初めて見学する時は、どんなところを見たり聞いたりすれば良いのか分からないでしょう。この記事では、施設見学をする時に「見てくるところ」と「聞いてくるところ」に分けて、具体的な内容を説明してあります。記事を読んで、自分が必要だと思うところを選んで、施設見学の際には参考にしてみてください。

見てくる所

 適切な施設を選ぶために、どんなところを見てくると良いのかを考えてみました。ただ、一度見ただけでは分からないところもあります。可能であれば、何度か見学にいく事が良いと思います。また、1つの施設だけではなく、色々な施設を見学する事で、良い所・足りない所が見えてくるのではないでしょうか。

スタッフについて

 スタッフの対応は、介護施設の質を決める重要なポイントだと思います。利用者が、安全で快適な施設生活を送る上で、スタッフとのコミュニケーションは必要不可欠だと思います。

スタッフと利用者の交流

  スタッフの中には、利用者を愛称や〇〇ちゃんと呼ぶ人が居ます。親しみを込めているのかもしれませんが、自分の親が呼ばれているのを想像すると、あまりいい気持ちはしません。しっかりと、名前で呼んでいるのかを確認しましょう。また、利用者に呼ばれたときに「待っててください」と言うだけで通り過ぎていませんか。一度立ち止まり、利用者に顔を向けて返事をしているのかも大事だと思います。細かい事かもしれませんが、そういった事が出来るスタッフと出来ないスタッフでは、他の場面で大きな差が出てくると思います。

スタッフの人数

 利用者の人数に比べ、スタッフの人数はどうでしょうか。仕事を頑張っているのであればいいですが、人数が少ない事が理由で、バタバタと走り回っているような施設では、利用者も落ち着いて過ごす事は難しいでしょう。また、スタッフの人数が少ない施設は、仕事が雑になったり、ストレスから利用者への虐待に繋がる可能性もあります。特に夜間帯のスタッフの人数は、日中の見学では把握できません。そこは、しっかりと確認しておく必要があります。

環境面

 その施設が利用者のニーズにどれだけ対応できる環境なのかを見てきます。日々の生活や緊急時に安全に過ごせる環境が整っているかが大事になります。これらは全て、利用者の快適性や安全性に直結するため、施設選びにおいて非常に重要だと思います。

バリアフリー

 施設のなかは、バリアフリーが完備されているのでしょうか?車いすや歩行器を利用していても、問題なく施設の中を自由に行動できることが大事です。また、段差を解消する事は転倒予防にもつながります

トイレ関連

 利用者の人数に合わせた数のトイレが用意されているのかが大事です。準備されているトイレが少ないと、トイレ誘導や本人の意思でトイレに行きたい時に待つ必要が出てきます。トイレが空いてないから、仕方なくオムツの中に排泄するなんて事が無いように、しっかりと確認しておきましょう。また、トイレの数が少ない事を理由にオムツ対応になる可能性もあります。それでは、自立に向けた生活とは程遠い対応です。また、トイレに手すりが設置されているのか、冬場は便座が冷たくないようにヒーター付きなのかも見るべきところです。

食事関連

 食事は、高齢者になっても楽しみにしている人が多いです。しかし、環境が整っていなければ、楽しみも半減してしまいます。食堂は、清潔感があり十分な明るさが確保できているのか。ゆっくりと食べれるだけの広さはあるのか。机の高さは、本人に合わせて調整出来るのかなどを確認しましょう。また、自助具などを使用して食べている方であれば、同様の道具が準備出来るのかを確認する必要もあります。

居室関連

居室に十分な広さがあるのかを確認しましょう。車いすや歩行器を使う人であれば、歩く人に比べ、ある程度の広さがないと居室内の移動に苦労すると思います。また、多人数部屋であれば隣のベッドとの距離も気にした方が良いのかもしれません。他利用者の歩行器や車いすが自分のベッドに当たって嫌な思いをする人もいます。また、プライバシーを守るための仕切りも大事です。眠りの浅い人は、隣の枕灯の明かりだけで寝不足になってしまう時があります。

リハビリ関連

リハビリを希望している人であれば、リハビリの設備も重要になります。専用の部屋やリハビリの器具が用意されているのかを確認しておきましょう。

衛生面

 施設の衛生面は、施設が適切に管理されていることを示す指標となると思います。ただ、多少の汚れがあっても、見学時の一時的な状況である可能性もあります。そのため、何度か見学を行い、確認する必要があります。以下に見ると良いと思う具体的な場所をあげてみます。

床や家具

 一般的に、床や家具、窓などは清潔に保たれているべきだと思います。家具の上にホコリが溜まっていたり、食堂の床に食べこぼした物がいつまでも落ちていたりしていないかを見てみましょう。

お風呂場やトイレなど

 お風呂場やトイレなどは、入所者が頻繁に利用するため、清潔に保たれていることが大事です。トイレには紙類が散らかっていないか、トイレットペーパーが十分に補充されているか、お風呂はカビや汚れがないかなどを確認してみてください。

利用者個人の清潔さ

 利用者の衣類が清潔で、手や顔、髪の毛がきちんと整っているかも確認しましょう。これはスタッフが、利用者一人ひとりの身体ケアにきちんと対応しているかを確認できます。

臭い

 強い消臭剤の香りや不快な臭いがしないか確認してみてください。施設内全体が清潔であれば、通常、臭いは問題にならないと思います。

聞いてくるところ

 見ているだけでは分からない事も沢山あります。仕事中だからと遠慮せず、気になる事はしっかりと確認しましょう。こちらの質問に対して、誠意をもって答えてくれるのかどうかも、施設全体の評価になると思います。施設見学の対応も上手く出来ない施設で、利用者が安全で楽しく生活できるとは思えません。ただ、仕事中に余計な時間を使わせてしまう事は控えたいです。施設見学の前に、どんな事を聞きたいのかしっかりとまとめておきましょう。

入退所の条件

 入所までの期間や条件は、施設により様々です。また、同じ種類の施設でも経営方針などにより、細かい部分が変わってきます。退所条件も同様ですので、あとで困らないようにしっかりと確認しておきましょう。

入所について

 施設に入所するためには、色々な条件があり、全ての人が入所できるわけではありません。また、入所申し込みから、実際の入所までの期間がどのくらい掛かるのかも聞いておきましょう。待機人数が多いのであれば、複数の施設に申し込みだけ行い、声が掛かるの待ちましょう。どうしても入りたい施設であれば、待つことも良いですが、在宅介護の継続が難しいのであれば、とりあえず早く入れる施設に入所して、希望する施設を待つ事も1つの方法です。

退所について

 入所条件と同様に、退所条件も重要になります。特定の条件になった場合、または、入所条件を満たさなくなった場合、強制退所の可能性もあります。施設の種類だけではなく、施設方針によっても細かい部分が異なるので確認が必要です。長期入所を考えているのであれば、本人の状況の変化に幅広く対応出来るように、医療ケアが充実しており、看取り介護やターミナルケアなどを実施している施設がよいと思います。

スタッフについて

 利用者への対応方法などは、見学する事で確認できますが、スタッフの資質的な事は確認する必要があります。

資格について

 施設には、配置基準というものがあります。これは、〇〇の資格を持ったスタッフが、最低〇人居ないとダメだよというものです。しかし、最近は配置基準に示されていない専門スタッフを配置しているところもあります。たとえば、リハビリスタッフが常駐しており、「専門のリハビリが受けれますよ!」とかです。

同じ種類の施設でも、そういった事で差別化しようと努力している施設もあるため、自分が必要だと思う事があれば、その資格をもつスタッフが何人くらい居るのかで施設を比較してみるのも良いと思います。自分の専門であるリハビリの資格であれば、大きく分けると身体機能面に特化した、理学療法士や作業療法士、口腔機能面に特化した、言語聴覚士があります。自分が希望されるリハビリの内容によっては、どの職種がいるのかも大事になってきますね。

料金体制

 施設の料金体制が、自分の予算や経済状況にあっているのかを確認する必要があります。施設費用は、地域や施設により大きく違う事があります。おおよその金額は、ネットなどで調べる事も出来ますが、正確に把握するためには直接施設に聞く必要があります。また、外部サービスを使用する場合は、利用するサービス内容により月額料金が変わってくるので、ケアマネージャーなどに相談し、おおよそ幾らくらい掛かるのかを把握する事が可能です。

規則やルーティン

 施設生活では、ある程度のルール上にそった生活になると思います。入所した後に、こんな事知らなかったとならないように、しっかりと確認しておきましょう。

日常のスケジュール

 起床時間や食事時間、レクリエーションや休憩時間など、1日の流れを確認しておきましょう。在宅での生活リズムとかけ離れた内容であれば、入所者の負担はかなり大きなものになります。ある程度の変更であれば可能かと思いますが、基本的に集団生活では個人が合わす事になると思います。施設入所する前に、在宅で調整して慣れていく事も必要になるかもしれません。

ルール

 施設のルールとは、例えば訪問時間の制限や予約方法などです。また、おやつや携帯電話、TVなどの持ち込みが可能なのか確認が必要です。そういった個人の持ち物の管理方法なども聞いておきましょう。外出制限を設けている施設もありますし、他科受診が難しい施設もあるので、定期的に薬を処方してもらっている方は確認しておくことが大事です。

食事面

 食事は日々の生活の大切な部分であり、健康や生活の質、心の満足度にも影響する大事な項目です。そのため、介護施設を選ぶ際に非常に重要になると思います。

特別食の対応

 アレルギーや嚥下機能に対しての形態変更、糖尿病などに対しての制限食など、どこまでの対応が出来るのかを確認する必要があります。現在は、問題がなくても今後必要になる可能性もあります。対応が難しいまま、食事を続ける事で、窒息や誤嚥性肺炎・病状の悪化を引き起こす可能性があります。

提供方法

 問題なく自分で食べれる人は良いですが、特別な道具が必要であったり、少しの介助が必要な人もいます。なるべく自立した生活を目指すのであれば、時間が掛かっても道具を使用したり、環境を整え、自分で食べることが大事です。しかし、時間的な問題から全部介助してしまう施設もあります。入所予定の施設が、どういった方針なのかを確認しておく事が必要です。

医療との連携

 高齢になれば、健康状態が不安定になりやすくなります。そういった場合に、どのように対応してくれるのか、確認しておくことが大事です。

緊急時の対応

 脳梗塞や心筋梗塞など、緊急性の高い状態になったときに、どのような対応が可能なのかを確認します。連携している病院はどこなのか、施設からどのくらいの時間が掛かるのかが重要になってきます。病院に併設している施設や、ある程度の対応が可能な施設であれば、より安心して任せる事が出来るでしょう。

特殊な医療ニーズ

 点滴や医療的な処置が必要になった時に、どのような対応になるのかを確認します。看護師が24時間常駐する施設であれば、ある程度の医療処置が必要であっても、対応してくれますが、居ない施設では強制退所の原因にもなります。また、専門スタッフが居る施設は、定期的な健康管理を実施してくれることが多いため、病気の早期発見にも繋がります。 

家族との連携

 施設入所すると、家族は本人の様子が分からなくなり不安に思う事もあります。施設側とどのような方法で連携していくのかを確認しておきましょう。

コミュニケーション方法や頻度

  入所者の健康状態や日々の生活状況、変化などをどの程度の頻度で報告してくれるのか、また報告の方法(メール、電話、面談など)はどんなものを使用するのかを聞いておくと良いです。また、家族側が連絡する時は、何処の誰に電話すればいいのかも確認しておきましょう。

家族の参加

 家族の意見や要望を、施設がどのように取り入れてくれるのかを確認しましょう。例えば、ケアプランの作成時や見直し時に家族が意見できる機会があるのか、聞いてもらった要望の結果を教えてもらう事が出来るのかです。また、施設のイベントなどに家族が参加出来る物があるのかも確認しておくと良いでしょう。

まとめ

 今回は、介護施設の見学についてまとめてみました。設備などの物理的な側面も大事ですが、スタッフの対応や家族や病院との連携など、人間的側面も見落とさない事が重要だと思います。これらを踏まえた上で、施設を選択すると良いと思います。入所する人(自分の親など)にしてみれば、毎日の生活を送る場所であり、第2の家となります。そのため、見学は慎重に行い、しっかりと情報収集をしましょう。

最期に、この記事を読んで頂き、ありがとうございました。

見てくるところ
  • スタッフについて
  • 環境面
  • 衛生面
聞いてくるところ
  • 入退所の条件
  • スタッフについて
  • 料金体制
  • 規則やルーティン
  • 食事面
  • 医療との連携
  • 家族との連携
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