この記事では、リハビリの目線から、食事形態の種類や対象となる人の特徴などを解説しています。
嚥下機能(食べる能力)が低下した高齢者にとって、食事形態を考える事は、ムセ(誤嚥)や窒息、食べこぼしや、食事拒否の予防に大事なことです。
そのためにも、まず食事形態の種類を理解し、どんな目的で、どんな人が対象になるかを確認しましょう。
食事形態の種類とは・・
食事形態の種類や内容は、施設によって細かい部分で違うことが多いです。
この記事は、自分が働いている施設で使っている呼び方や内容で説明してあります。他の施設や病院で説明を受ける時には、注意してください。
常食(嚥下機能に、ほとんど問題が無い人)
飲み込む力 | 〇 |
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噛む力 | 〇 |
自分たちが食べる物と、ほとんど変わらないです。飲み込む力・噛む力が保たれている人が対象です。
しかし、健康な高齢者であっても、若い人に比べれば、嚥下機能(食べる能力)は低下しています。少し柔らかめに作ったり、食べやすい食材を選ぶなどに配慮する必要があると思います。
また、箸が上手く使えずにスプーンを使用している人は、調理法によっては、食べにくい形態をしている物もあります。
そのため、嚥下機能だけではなく、使用する道具の事も考えて、以下に紹介する食事形態に変更を考える必要もあります。
一口カット(嚥下機能に、少し問題がある人)
飲み込む力 | 〇 |
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噛む力 | △ |
この食事形態は、飲み込む力は残っているが、噛む力が少し弱くなってきた人が対象です。
具体的には、お肉などが、上手く噛み切れない人や少し大きな物を飲み込むとムセ(誤嚥)てしまう人です。
この食事形態は、口の中に入れやすいように、1口サイズに切ってあります。カレーに入れるジャガイモとかニンジンを小さめにした物をイメージしてくれると分かりやすいと思います。
また、スプーンで食べている方には、すくい易いといった理由で提供する事もあります。あとは、認知症の人で早食いやかき込み食いをしてしまう人にも、安全面を考えて提供する事があります。
在宅で作る場合でも、この形態であれば、あまり負担にならずに作れると思います。
あら刻み(嚥下機能に、問題がある人)
飲み込む力 | △ |
---|---|
噛む力 | △ |
飲み込む力も、噛む力も弱くなってきた人が対象です。焼き魚で言えば、身がほぐしてある状態だと思ってください。
あら刻みは、かなり細かくするために、箸では難しくスプーンなどを使用する必要があります。
嚥下機能(食べる能力)が低下している人以外では、歯が少ない方や、おなかの調子が悪い人に消化を助ける意味で一時的に提供する事もあります。
一口カットと同様に、早食い・かき込み食いの人に対して提供する事もあります。この形態だと、在宅での準備には、少し手間がかかるようになります。
また、形が無く見た目が悪くなる事から、食べている人の中には、「味気ない」「食べる楽しみが無い」と言われる人もいます。
ミキサー食(嚥下機能に、かなり問題がある人)
飲み込む力 | × |
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噛む力 | × |
飲み込む力、噛む力が大きく低下している人が対象です。食材をミキサーにかけて、完全に形をなくしたものです。
あら刻みに比べると、ミキサーを使用して完全にペースト状にしてしまうため、自宅での準備は、こちらの方が手間が掛からないかもしれません。
ペースト状になると、水分が出る食材も多いため、トロミを付けて提供する事が多いです。また、ペースト状にするため、その見た目から「味気ない」「食べる楽しみがない」と言われる人も多いです。
ソフト食(嚥下機能に、かなり問題がある人)
飲み込む力 | × |
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噛む力 | × |
飲み込む力、噛む力が大きく低下している人が対象です。ミキサーで1度ペースト状にしたものを、食材の形に似せて固めたものです。
1度ペースト状にしているため、飲み込む力や噛む力が弱くても食べる事が出来ます。食材の形に似せる事から、見た目の食欲減退を防ぐ事が期待できます。
しかし、作るためには手間暇がかかるため、在宅で準備する事は難しいと思います。(自分が担当している人で、家で食べている人はいません)
食事形態を決める時は、専門スタッフに相談しよう
色々な食事形態の種類や目的などを説明しました。しかし、嚥下機能や本人の状態から、どんな食事形態が適しているのか考える事は難しい時があります。
間違った食事形態を提供すると、ムセ(誤嚥)や窒息といった、リスクの高い問題が起こる可能性もあります。
もし、自分が介護している人に食事形態の変更が必要と感じたら、通っている病院や施設、また担当してくれているケアマネージャー(介護支援専門員)に相談してみましょう。
配食サービスや既製品を上手く使う事も大事です
この記事では、食事形態の対象者や目的などを書いてみました。在宅で介護するのであれば、食事介助は必ず必要な項目です。
しかし、食事介助は食べさせる事だけではなく、その人にあった食事形態を準備する必要もあります。必要な食事形態によっては、家族への負担が大きくなります。
もし、負担が大きく、介護を続ける自信が無くなりそうなときは、配食サービスや既製品を上手く使い、介護負担を軽減する方法を考えましょう。
どうしても、作る事に比べると割高になりますが、施設への入所に比べれば、安い費用で在宅介護が続けられると思います。
最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。